目が不自由な人たちのため、約60年前に岡山市で誕生した「点字ブロック」。そのことを世に広めようと、車体に点字ブロックをデザインしたタクシーが18日から岡山市内を中心に運行している。
両備グループ(同市)が、タクシーカラーの黄色にちなんで岡山の黄色い名産物などを車体にラッピングして応援する企画の第5弾で、岡山交通の西営業所(同市北区)に所属する。
車体には、点字ブロックや白杖(はくじょう)を持って歩く人が描かれ、「点字ブロックは岡山生まれです」のメッセージ。屋根には盲導犬の飾りを置き、助手席と後部座席の足元には本物の点字ブロックを敷いた。
点字ブロックを発明したのは、岡山市で旅館を経営していた故・三宅精一さん(1926~82)。白杖を持って交差点を渡っていた人の横を車が勢いよく走り去った場面に遭遇して、視覚障害者のために、コンクリートに突起を並べたブロックを発明。67年3月18日に県立岡山盲学校への通学路にある原尾島交差点に敷設した。
「鼻歌歌いながら歩けるように」
70年代に入って鉄道会社が採用して全国に広がり、2001年に日本工業規格(JIS、現日本産業規格)、12年に国際規格ISOが採用した。10年には最初にブロックが敷かれた国道250号南側に当時の点字ブロックを埋め込んだ記念碑が設置された。
最初の敷設からちょうど58年後にあたる「点字ブロックの日」の18日、岡山市北区で出発式があった。県立岡山盲学校で教頭を務め、記念碑の設置にも尽力した全盲の竹内昌彦さん(80)は「私が20歳ごろまではまっすぐ歩くのは大変で、しょっちゅう水路や田んぼに落ちた。点字ブロックができてからは鼻歌を歌いながら歩けるようになった」と体験を語り、関係者らとテープカットして出発を祝った。
担当乗務員らは視覚障害者の乗降の誘導などに関し、研修を受けたという。乗務員の山木拓馬さんは「学んだことを大切に、目の不自由な方に安心して乗ってもらえるよう努めたい」と語った。
式典の後、出席した視覚障害者の末木智恵さんと盲導犬のエルモが、乗車して会場近くを回った。末木さんは「足元が広くて盲導犬と一緒に乗るのに快適。点字ブロックは目の不自由な人間には大事なものだと多くの人に知ってもらいたい」と話した。
乗車すると特製キーホルダーとシールがもらえる。両備タクシーセンター(086・262・3939)から予約できる。